PCOS,多嚢胞性卵巣症候群,ホルモン検査,月経周期

   私たちイヌイ薬局店頭でのご相談でもここ近年増加しているのがPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の

   ご相談。

   毎年の中国で婦人科の研修をおこなっていますが現在は中国でも増加傾向にあります。

 

   PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)ではたくさんの「卵」ができてしまいます。

   通常の排卵では、5~10個くらいの卵巣内の卵のなかから排卵に向かう「主席卵胞」と

   呼ばれる良質の「卵」ができるのですが、PCOS(多膿胞性卵巣症候群)ではこの

  「主席卵胞」ができなくなくなってしまい、当然その周期は「排卵しない」ことになります。

 

 各国で定義が違いますが日本での医学的な定義は

  1.ホルモン検査からの判断

    男性ホルモンの値が高いか、LHと呼ばれる黄体刺激ホルモンの値の

    比率が卵胞刺激ホルモンと呼ばれるFSHホルモンと比べて高い。

  2.卵巣をエコーで見る視覚的な判断

    卵巣のなかにネックレスサインと呼ばれる、必要以上の卵が卵巣周辺部

    に認められる

  3.外見からの判断

    口ひげ、ニキビ(しつこいニキビ)、声が低いなど男性ホルモンが高い

    と思われる男性化の症状や、生理周期が35日以上と長く不定期で

    あったり、無月経になったりするいわゆる生理不順の症状が見られる

    ことが多いようです。

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 PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)でやっかいなのは、

   ◇妊娠はするけれど流産しやすい

   ◇消えては繰り返すしつこいニキビの原因となる

   ◇生理痛はないけれど生理周期が安定しない

 などの特徴もあってPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)が根本的に

 改善されないと、上記の症状がなかなか消えないことがあります。


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  自覚症状


  ◆月経周期が35日以上など長い

  ◆生理が来たり来なかったり生理不順

  ◆ニキビが多い、しつこい

  ◆口ひげや体毛など毛深い

  ◆肥満気味や急激に体重が増える

  ◆生理不順・不正出血・無排卵・習慣性流産など婦人科の症状


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 PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は不妊症の原因となる以前に、

 生理不順、生理出血、無排卵、習慣性流産の原因となってしまいます。

PCOS,多嚢胞性卵巣症候群,ホルモン検査,原因

    PCOSの原因には諸説があり、はっきりとは解明はされていません。
    現在のところ、内分泌異常・卵巣の形態的変化・副腎の問題・遺伝子説、

    あるいは糖代謝の異常などが考えられています。

 

     ◆内分泌の不調和

      視床下部~下垂体~卵巣というホルモン分泌過程の不調和が、

       多嚢胞性卵巣症候群の原因だと考えられています。

       女性が排卵を起こすためには、視床下部、下垂体、卵巣という、それぞれの部位から

       正常にホルモン分泌が行なわれなければなりません。

       PCOSではエストロゲン生産が低下して、アンドロゲン産出が亢進(たかまる)することが

       特徴です。


     ◆adrenarche(アドレナーキ)説

      子供が成長する過程で、68歳頃から大人になるきっかけとなるホルモンが分泌されるように

       なります。(アドレナーキ)

       このホルモンが思春期を通して過剰に生産されると、多嚢胞性卵巣症候群の原因になると

       考えられています。


     ◆遺伝的要因説

      X染色体の構造や数に問題があるという報告があります。

       実際にPCO患者の姉妹や両親には、極端な多毛や肥満などの遺伝子的要因が

       見られることもあります。


     多嚢胞性卵巣と肥満

      一般的に肥満女性にはPCOSが多いこと知られていますが、PCOSと診断されない肥満女性にも

        排卵障害の確率が高いことが報告。

 

        これは肥満が「アンドロゲン」の過剰産出を促進し、排卵率を下げてしまうことが原因と考えら

                    れ,PCOSの治療後に妊娠した肥満女性が、流産率がやや高くなることが知られています。


     ◆インスリン抵抗性

      インスリン抵抗性が関与していると以前から考えられています。実際にPCOS患者のインスリン

       抵抗性を調べてみると、血糖値や糖代謝に異常があるケースが多いことが報告されています。

       血中に高濃度のインスリンが認められると、卵巣でのアンドロゲン生産を促進するとともに、

       肝臓では性ホルモン結合グロブリンのが抑制されて、テストステロン(男性ホルモン)の濃度が

       高まると考えられています。


  日本産婦人科学会によってPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診断基準は明確に分類されて

   いますが、その原因はひとつではなく複数の原因が重なり合っていると言われています。

PCOS,多嚢胞性卵巣症候群,ホルモン検査,対処法

    加齢による「卵の質」の低下は取り戻しにくいかもしれませんが、

    PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などが原因であれば食事や生活習慣を見直すことで

    「卵の質」を改善することも可能です。



     ◆  脱・肥満

      日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会の報告によると、

      PCOS患者の肥満頻度は20%

      そして違う報告では、肥満婦人の48%に無月経がある、

      あるいは44.8%無月経や稀発月経などの月経異常が

      出現するとあります。

      計画的にダイエットプランを決めて体重を減らしましょう。


     ◆ 食事療法

     偏った食事をすることなくバランスよく(炭水化物も)

      食べる。食事療法の意識としては「食べれないのではなく、

      必要以上に食べてはいけない」ということです。

      間食はやめて1回の食事をしっかりと取りましょう。

      朝昼晩に食べる食事のカロリー量は、毎日同じが望ましい

      のです。


PCOS,多嚢胞性卵巣症候群,ホルモン検査,食事

     ◆ 運動療法

      動的運動(有酸素運動)と静的運動(無酸素運動)、そして軽いストレッチなどの体操を

      毎日取り入れることで劇的な効果があります。

 

      有酸素運動の代表はウォーキング。11万歩を目指して毎日繰り返し歩いてみてください。

      運動療法は、過度に頑張るのではなく、毎日続けることを目標にしましょう。


     ◆ 漢方療法

      古くから漢方薬も治療に使われてきています。

      総コレステロール値、中性脂肪、LDL-コレステロールの減少、あるいは皮下脂肪厚の低下など

      肥満対策だけでなく、カラダの栄養やバランスを整えることで改善できます。


 


   ■ PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の特徴のひとつ インスリン抵抗性の増大

     インスリンは糖をからだのなかに取り込む唯一のホルモンなので、インスリンの抵抗性が増すと

     血液中の糖が取り込まれないため最終的には「糖尿病」になってしまいます。

     ですから、PCOSの現代医学的な対処法のひとつに、PCOSの患者に対してメトフォルミン

     などの糖尿病約を一時的に投与して妊娠に成功するケースも珍しくありませんし、ダイエットして

     いるうちに妊娠してしまうケースも珍しくありません。


  ■ PCOSと診断された場合の食事

     糖尿病の食事と同様に食後の血糖値があがりにくい低GIの食事がおすすめです。

     特に、注意したいのは妊娠を希望されるのですから必要なタンパク質、ミネラル

     ビタミンなどは十分に摂取する必要があります。

     ですが、食事の内容を細かく考えるのは、忙しい現代の女性にとっては大変なこと

     だと思います。



      目標♪

     「糖分がゆっくり吸収される食材(低GI)で、栄養素はたっぷりの高栄養な食材。」 


主食は種子などの栄養は完全でありながら吸収をゆっくりにしてくれる

食物繊維が豊富穀類中心で全体食の「全粒粉(ホールフーズ)」を

意識しましょう。



     ◇ 全粒粉は、白米に比べ玄米は食物繊維が豊富に含まれるため食後の血糖値があがり

      にくくなります。

     ◇ご家族の好みなどで玄米食がむつかしい方は、粟(アワ)や黍(キビ)麦(ムギ)

      などの雑穀をまぜても良いでしょう。

      雑穀については、日本を代表するお料理研究家の辰巳芳子先生が考案されたスーパー

      ミールは安心でおすすめです。

     ◇パンが主食なら、やはり全粒粉やライ麦パンがおすすめです。

      また、パスタも全粒粉のパスタがおすすめ。いずれも、生成された小麦に比べ、食物

      繊維が含まれるため食後の血糖上昇は穏やかになります。

 

 

汁では昆布で出汁(ダシ)を取ることが決め手!

中医学の古いことわざに

「食前の汁は神様の処方にまさる。」とも言われています。

とにもかくにも、血糖値を上げない主食とお味噌汁等の汁物が決め手です




   結果的に主食も汁物もどちらも食物繊維が豊富で食後血糖がゆっくり上昇します。

   まず食事のはじめに、このような出汁汁全粒粉の主食や野菜からお箸をつけると、

   あとから食べたものの吸収も穏やかになります。


      ◇汁物について

       汁物についても、食物繊維が豊富なものにするためには、昆布で出汁(ダシ)を

       とることが大切です。



      参考までに日本を代表するお料理研究家の辰巳芳子先生のベストセラーとなった

      「いのちのスープ」から昆布のうまみを最大限に引き出す「一番だし」の引き方を

      ここでご紹介します。


      ①なべに分量の水と昆布を入れ、1時間くらいおく。強めの中火をかけ、昆布から小さな泡が出て

       きて揺れ出したら弱火にする。20分間くらい、沸騰しない状態を保つ。削り節を入れる。

      ②味をみて「よし」といえるほど昆布のうまみを引き出したら、昆布を取り出す。

       水カップ1/4を注いで温度を下げ、削り節を入れる。五呼吸で火から水を下ろす。

      ③五呼吸(約5秒間)したら火から下ろし、まず、こし器を逆さにしてこし、次に、ざるに紙タオル

      (不織布タイプ)を敷いてこす。かつおの臭みが出るので、削り節を絞ってはいけない。

      ④すぐ料理をするなら、そのまま使用してよい。

      ⑤保存するなら、鍋にいれて火にかけ、水面がゆらりとする温度(約50℃)で殺菌する。

       完全に冷めたら密封容器にいれる。

       保存/冷蔵庫で2~3日間保存できる。梅干を1個いれておくと、だしが傷みにくい。

 

         以上、普通の一番だしは火にかけて煮立つ前に引き上げますが、これは弱火で20分から30分間も火

         かけます。そして、小さな泡が出てくるのを鍋から目を離さず見守ることがおいしい出汁(ダシ)

         をとるコツなのです。

         そしてようやく、昆布のうまみが最大限に引き出せるわけですが、お母さま自身も仕事をかかえて限

         られた時間のなかで、出汁(ダシ)をひくとために鍋につきっきりで30分以上の時間を割くのは大

         変かもしれません。

         冷蔵保存で2~3日ですから、休日などに作りおきするとしても毎日の朝食や夕食に出汁(ダシ)を

         ひくのはかなり大変でこと。大切な来客をおもてなしする、お正月やお盆に腕を振るっていただきた

         いと思います。



  出汁がひけないほど忙しい方々も多いことと思います。

 そんな方々に手軽に昆布出汁(ダシ)に等しい成果が得られるのが「浸し昆布」です。

   つくり方はいたって簡単☆

  「浸し昆布」のつくり方水1Lに10g程度の昆布を浸して一晩つけおくだけ

  これなら、仕事を持つ忙しい主婦にも簡単にできるでしょう。それも、忙しくてできない方はご主人

  やお子さんなどのご家族にお願いして、寝る前に昆布を鍋やコップに浸して冷蔵庫に入れてもらいま

  しょう。


  味覚的に完全な出汁(ダシ)とはいえないまでも、10時間も浸せばうまみ成分である

  グルタミン酸も食物繊維も十分引き出せます。

  栄養的には十分すぎる出汁(ダシ)といえます。

  なぜなら、昆布には、現代の日本人に不足がちな「食物繊維」「ミネラル」そしてうまみ

  成分といわれるグルタミンをはじめとする人間が生きていく上で大切なアミノ酸が豊富に

  含まれていて、一晩つけおくことで出汁(ダシ)のなかに溶け込むからです。

  これらの現代人にとって不足がちな栄養素が、一晩つけおくだけで引き出せます。

  この「浸し昆布水」で調理をしたり、発汗の盛んな夏などは飲料として、またお湯で沸か

  してインスタントラーメンなどの即席食品とあわせていただければ、豊富なミネラルが塩

  分を中和し炭水化物に偏り勝ちなメニューにアミノ酸を加え、豊富な繊維が超過がちな

  カロリーの吸収を穏やかにしてくれます。


 

  漢方の世界で「昆布」はおくすりとしても使われています。

  日本では、食品ですが「昆布」を食べる習慣がある民族は世界中でも少なく、一人当たりの

  「昆布」の消費量は日本が世界一といわれています。

  

  中医学では「昆布」は「化痰利湿(ケタンリシツ)」といって、いらないものを体外に出し

  てくれる働きがあり、「からだのゴミ」掃除のことです。

  PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方々にとっては、卵巣のなかの嚢胞は中医学では痰湿

  (タンシツ)といわれ「からだのゴミ」として考えられています。

  まず、不要な嚢胞を漢方のおくすりや食事から排泄しやすくしておくことが根本的な改善に

  つながります。


  魚卵などを、昆布で巻く「昆布巻き」はもちろん味覚的にも

  美味を増しますが、栄養価の高い魚卵が「からだのゴミ」に

  ならないようにという、健康面での意味もあります。

  その結果、漢方で「昆布」は、「軟堅散腫(ナンケンサンシ

  ュ)」といって堅いものを柔らかくして、腫れたものを散ら

  すお薬として使われます。


   「腫れを散らす」といえば、ガンなど「「腫瘍」でお悩みの方が聞いたら喜びそうな効果です。

  また「堅いものをやわらかくする」といえば卵巣のなかの膿胞だけでなく「ゴリゴリにきび」

  の方などが喜びそうです。


 

  食材として何を食べるかも大切ですが、どれだけ食べるかも大切です。

  基本的に、穀類や海草類等の栄養価の高いものは腹八分目が原則です。

  腹八分目と言ってもおなかの中を覗くことはできませんから、

  腹八文目の目安は

   1、食後に体が重くならないこと 

   2、食後に眠くならないこと

   です。

  腹八分目の励行のためには、一口ごとにおハシを置いて30回咀嚼して食べることが大切です。


 

         ◎極力避けたい食品

            ・精製度の低い穀物(玄米、全粒粉パン、全粒粉パスタ)を食べる。

    ・ファーストフードはあまり食べない。
    ・砂糖は極力摂らない。
    ・清涼飲料水は飲まない。
    ・豆、野菜、果物、キノコ、海藻、を毎日食べる。
    ・砂糖の代わりに、ハチミツやメープルシロップを。


 

  食養生というと「あれも食べてはいけない、これも食べてはいけない。ばかりで食べるものが

  ありません。」とよく言われますが、上述の主食や汁物のように食べていただきたいものから

  まず食べて空腹を満たしてゆきましょう。スウィーツの好きな方は、ドライフルーツやナッツ

  などで代用できないかとか、白いお砂糖よりも蜂蜜黒砂糖などの天然の甘味料のほうが血糖が

  上昇しにくく身体に優しいと言えます。


  最後に、「何を食べるか」も大切ですが「誰とどのように食べるか」も大切です。

  身体にやさしい食材を考えながら、一緒に食事をしてこころ穏やかに過ごせる家族や仲間と

  楽しい食事をお過ごしください。

 


  参考図書

 ダイエットでの妊娠例は電子書籍

「漢方で考える不妊症PCOSとダイエット」


 

   ◆ シベリア霊芝(シベリアれいし)

 「シベリア霊芝」は生きた白樺の樹液を吸って成長するキノコであるチャガ

 を使っています。このチャガはシベリアに広がるタイガで冬場に採取されま

 す。ロシアのノーベル賞作家であるソルジェニーツィンの著書《ガン病棟》

 に記述があります。「シベリア霊芝」はこの本場ロシア産のチャガを使用し

 た粒タイプです。



   ◆ 参茸補血丸(サンジョウホケツガン)

 滋養強壮薬によく配合されるニンジン・ロクジョウを

 はじめリュウガンニク・カラトウキ・オウギ・ゴシツ

 ・トチュウ・ハゲキテンという8種類の生薬を配合し

 丸剤としたもので、虚弱体質、肉体疲労、病後の体力

 低下、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症の場合

 の滋養強壮を目的としています。 


 

   ◆ 炒麦芽(いりばくが)

 麦芽(発芽させた大麦)を軽く炒ってエキス末にした

 ものです。「炒麦芽」は中国の伝統的な考え方におい

 て女性にやさしいものといわれています。